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『こだま』

富士樹海。表面的な美しさとは裏腹に、樹海入口の道路は 来訪者のたちの生死を分ける場所だ。気を許すと、観光客 に混ざって歩いていた人間が、道無き場所で姿を消す。 夕方、日が落ちそうな頃、スラックスや革靴で登山姿ではない、 明らかに「それ」とわかる年配者が道路脇から樹海に入り込む。

手にはワンカップの酒や缶ビールを山ほど持っている。声を かけ、くだらない話をして、ときにはもらい泣きをし、ときには 大声で笑い、恫喝にも似た恐ろしげな言葉を吐き・・・・・・この 10年で・・・何人もの人を樹海から遠ざけ、駅までおくり届けた。

年間、何千人もの人間が自殺をし、希望を失い、生きることを あきらめる。命のリサイクルなんてないのに、ただただ、苦しくて 死を選ぶ。 俺に出来ることといえば、使命感なんぞありゃしない くせに、ぷらりと寄ったそんな場所で、死を強烈に意識した人間達 と話して話して話して話して・・・なんとか帰る道筋をつけるだけだ。 それでも、きっと、また日を変えて、この場所に戻ってくるやつも 少なくないだろうな・・・。虚しいけど、それが現実だ。

呼吸することさえ、あきらめて、がんばるってことさえ忘れちゃった 奴らなんか、知ったこっちゃねぇし、勝手にくたばっちまえ、っちゅう のが俺の本心なんだ。 でも、でも、やっぱ、気持ちや体が勝手に 動いて余計なお世話を今日もやってんな・・・。

本来なら、他人様が介入できない場所だろうし、そんなこたぁ百も 二百も承知だけんど、それでもやっぱ体が動く。なんで、自分が こんなんなっちゃったのか知らないけど、もしかしたら、負け続けて る俺自身を癒すための自己満足の行動なのかもしれんなぁ・・・。

弱者ってさ、ひっくり返れば強くなれるよ。 多分ね・・・。ようはさ、 きっかけだろうな。もうちょい、もがいてみっか。まだまだ・・・ できることはいっぱいあんべ。おーそりゃそりゃ。あーあー。暗い 記事だなぁ。 すまんね。 ばいちゃ。  木津龍馬

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